電子工作教材ちょこまカーの極意を伝授

モーターの構造とダイオードの役割

 
ちょこまカーのダイオードはモーターを固定する役割とモーターの配線の役割もありますが、電子部品としての役割はモーターから出る高い電圧でトランジスタが壊れるのを防ぐことです。ではなぜ高電圧が出るのか説明するために、ついでにモーターの原理を学びましょう。

モーターの中身

下の写真はちょこまカーのモーターの中身です。

写真:モーターの中身

回転する軸の方に120°ごとに電磁石が3個ついています。回転する方をローター(回転子)と言います。回転しない方をステーター(固定子)と呼び、中には永久磁石が2個ついています。 その他に、ローターの電磁石に流れる電流の向きを自動的に切り替える役割をする電極がついていますが、ローター側の電極をコンミュテーター(整流子)、ステーター側の電極をブラシと言います。

下の図でモーターが回転する原理を学びましょう。ローターについている電磁石の形は単純化してあります。

図:モーターが回る原理

磁石のN極とN極またはS極とS極は反発し、N極とS極は引き合います。ローターを右に回転させるためには、いつでも電磁石の上側がN極、下側がS極になるように、それぞれの電磁石の電流の向きを切り替えていけばいいことがわかるでしょう。 電流の切替をしてくれるのがコンミュテーターとブラシです。

図:コンミュテーターとブラシ

もし電磁石が2個しかない場合、回転力が出ない角度ができてしまいます。ちょこまカーのモーターのような小型の直流モーターはほとんど同じ構造ですが、大きな直流モーターは電磁石の数(極数)がもっと多かったり、ステーター側の磁石の極数が多かったりといろいろあります。 最近はひじょうに強い永久磁石が作れるようになっているので、ほとんどステーターで磁力線(界磁)を発生させているのは永久磁石ですが、界磁も電磁石で発生させるモーターもあります。

ところで、上記のモーターの原理は磁石が吸い付くか反発するかで説明されています。これは少なくとも小型モーターの場合は正しい説明です。マブチモーターのホームページでも同じように説明されています。 一方、電磁石の吸引・反発と似ているけれど違う現象として知られているのがローレンツ力です。磁界の中に置かれた電線に電流が流れると、磁界の方向とも電流の方向とも直交する方向に力が発生するというやつです。 ここで注意していただきたいのは、直流モーターを題材にした物理または電磁気学の例題や試験問題でつぎのようなのがありますが、それはローレンツ力で解くようにできています。
 例題:均一な磁界(磁束密度をBとする)の中に長方形のコイルがあり、電流Iが流れている。コイルが磁界に対して角度θを成す時、コイルが受ける中心軸に対するトルクを求めよ。

図:ローレンツ力で解くことを期待されている問題

ちなみに答えは2IBLRcosθになると思います。

コイルは慣性だ

電子回路でのコイルは、力学での慣性質量に似ています。質量に力をかけると速度は時間とともに直線的に増加していきますが、それと同じようにコイルに電圧をかけると電流は時間とともに直線的に増加していきます。 しかし電磁石コイルの電流はいつまでも直線的に増え続けるわけではありません。それはコイルの巻き線に電気抵抗があるため、その抵抗で決まる電流値までしか増加できないのです。自動車の例でも現実にはいろいろな摩擦があるので、いつまでも速度が上がるわけではありませんね。
 ところで、電磁石の電流が徐々に増えることに気がつかないことが多いのは、電磁石の大きさや鉄心の太さ、長さ、構造などで違いますが、電流が変化している時間は0.1秒以下とか1000分の1秒以下という場合が多いからです。

図:力学的慣性の例

コイルの電流がゆっくり増えるのはなぜかというと、磁界を作るのにはエネルギーが必要なので、コイルに電気エネルギーを投入して磁気エネルギーに徐々に変換していかなければなりません。そのために時間がかかるのです。
 逆に、コイルにかかる電圧をゼロにとしてもすぐには電流がゼロになりません。もしコイルに電気抵抗がなければ、電圧をゼロに戻しても電流は流れ続けて止まらず、磁界も減りません。それが超伝導コイルですね。 普通のコイルは電圧をゼロにすると徐々に磁気エネルギーが電気エネルギーに変換され、電気エネルギーは巻き線の抵抗によって熱エネルギーに変換されるので、電流はゆっくり減ってゼロになります。
 上の図で例えるなら、故障車にかかる力をゼロにするといのは、故障車を引っ張るのをやめることです。故障車は摩擦(ブレーキをかければブレーキの摩擦)で徐々に速度が落ちて止まります。

コイルから高電圧が発生する条件

ここで、電圧をゼロにするということとスイッチを切ることは違います。電圧をゼロにするということはゼロボルトの電源をつなぐことです。つまりコイルの両端を電線でショートすることです。
 コイルの電流をスイッチで切ろうとすることを上の図で例えると、故障車にかかる力をゼロにするのではなく、いきなり速度をゼロにしようとすることです。つまり止まっている物体に衝突させるようなもので、たいへん大きい力が瞬間的に発生します。
 それと同じように、コイルの電流をスイッチで切ると、コイルから高電圧が発生してスイッチの接点の間に火花が出ます。火花でエネルギーを消費しないことには電流が止まらないのです。

図:コイルの電流を無理に切ろうとすると……

スイッチは火花が出ることを想定した材質で作られていますが、スイッチのかわりにトランジスタを使う場合には何か対策をしないと壊れてしまいます。

ダイオードの役割

ダイオードはアノードからカソードには電流が流れますが、逆には流れないという半導体素子です。

図:ダイオードとは

ダイオードをコイルに「逆並列」に接続すると高電圧の問題が解決します。「逆並列」というのは普段はダイオードに電流が流れないような向きにして並列接続するという程度の意味です。

図:ダイオードによる高電圧対策

スイッチがONになっている間はダイオードのカソード側の電圧の方がアノード側より高いので、ダイオードには電流は流れません。つまり何の悪さもしません。コイルの電流をスイッチで切ると、その瞬間に流れていたコイルの電流はダイオードを通って流れるようになります。 その電流はいつまでも流れるわけではなく、コイルの巻き線抵抗で熱エネルギーに変換されることで消えていきます。
 逆並列ダイオードはスイッチを切ると自動的にショートする電線のようなものです。

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