電子工作教材ちょこまカーの極意を伝授

TR2, 3, 5, 6による電流アンプ

 

電流アンプを2つに分離

ちょこまカーの回路図の電流アンプの部分は、下の図のように2個の電流アンプの回路図を重ねて描いたものです。

図:電流アンプを2つに分離

TR5とTR3のアンプを「電流アンプ1」と呼ぶことにし、電流アンプ1の動作について考えましょう。抵抗R4(電流アンプ2については抵抗R5)は後で考えることにして、今は接続されていないものとします。

電流アンプ1の動作

電流アンプ1の動作は、簡単に言えば、TR5のベース電流が「直流電流増幅率」倍されたのがTR5のコレクタ電流になり、それがそのままTR3のベース電流になり、また「直流電流増幅率」倍されたのがTR3のコレクタ電流になります。 TR5とTR3の直流電流増幅率をどちらも100倍とすると、TR3のコレクタ電流はTR5のベース電流の1万倍になります。
 では試しに(1)電位が0.75 Vの場合の電流や電圧を計算してみましょう。(2)TR5のベース電位は約0.6 Vです。そうするとB点との電位差は0.15 Vで、そこに10 kΩの抵抗が入っているので、(3)この抵抗に流れる電流(つまりTR5にベース電流)は15 μAになります。 TR5の直流電流増幅率を100とすると、(4)TR5のコレクタ電流は約1.5 mAになります。

図:電流アンプを2つに分離

 ただし、TR3のベースに流れる電流が大きくなりすぎてTR3がこわれるのを防ぐための保護抵抗R6によってコレクタ電流が制限されることがあるので、ここでチェックしておきましょう。 (5)TR3のベース電位は約0.9 Vです。そのため保護抵抗R6(220 Ω)には最大でも0.9 Vの電圧しかかかりませんから、ここには約4 mA以下の電流しか流れませんが、上で計算した1.5 mAという値はこれに収まっています。 ですからTR5のコレクタ電流はそのままTR3のベース電流になり、TR3のコレクタ電流はさらに直流電流増幅率倍いなるので、さらに100倍して(7)1.5 mAとなります。

モーターの回転速度と電流

 ところで、この150 mAというのはモーターを回すのに十分な電流でしょうか。ちょこまカーのモーターの端子間の抵抗を測ってみると4.4 Ω程度です。そこに1.5 Vをかけると340 mA程度の電流が流れるはずです。 ところが実際にモーターに1.5 Vをかけて電流を測ると50 mA程度しか流れません。しかし、モーターの軸が回転しないように止めて電流を測ると200 mA以上流れます。
 これは回転しているモーターは発電もしているからです。モーターの軸を手で回しながら端子の電圧を測ってみると、回転速度に比例した電圧が発生していることがわかります。 モーターに電圧をかけて回転させているとき、モーターは発電もしますが、発電する電圧は外からかけている電圧とは逆方向になる性質があり、電圧が一部打ち消されてしまうため、回転しているモーターの電流は小さくなります。

※モーターと発電機はほとんど同じもので、使い方が違うだけです。

図:モーターは発電機でもある

話が脱線しましたが、150 mAというのはちょこまカーのモーターが正常に回転している時には十分な電流です。
 ところで、「150 mAというのはちょこまカーのモーターが正常に回転している時には十分な電流です」と言われると、モーターに流れる電流は50 mAなのか150 mAなのかわからなくなったのではないでしょうか。 トランジスタの基本的な動作としていちばん基本的には次のような説明を使ってきました。
 その1:ベース電流に対してコレクタ電流は「直流電流増幅率」倍になる
しかし、電圧アンプの説明の中で、それだけでは説明がつかない部分が出てきたので、別の考え方も使いました。
 その2:ベース電流が増えると「内部抵抗」が減りコレクタに流せる電流が増える
モーターに流れる電流を考えるには内部抵抗を使った説明の方が合っています(それでも完全には説明できません。その理由はトランジスタが「非線形」だからです)。 ベース電流が増えるほどトランジスタの内部抵抗が小さくなり、分圧の式でわかるようにモーターにかかる電圧が大きくなります。 TR3のコレクタ電流が計算上150 mAという場合は、コレクタとエミッタの間に0.1 V程度、モーターにかかる電圧は1.5 Vより少し低く1.4 V程度になるので、電流は50 mAより少し小さくなり、回転速度も少し遅くなるだろうと思われます。 TR3のベース電流が増えていくと(計算上のコレクタ電流も増え)モーターには1.48 V以上かかるようになります。

モーターが回転するB点電位の範囲とR4, R5

 TR5のベース電圧は約0.6 Vなので、B点電位がそれより低いときはベース電流が流れず、モーターM2に電流は流れません。逆に電流アンプ2ではB点電位が0.9 Vより高いときはTR2にベース電流が流れないので、モーターM1に電流は流れません。

図:R4とR5がない場合のモーターの回転する範囲

上のグラフを見ると2個のモーターは同時に回転する範囲があることがわかります。この範囲を広げるには抵抗R4とR5を接続します。抵抗R4とR5はそれぞれトランジスタTR5とTR2のベース電流を増やすことによってモーターが回転するB点電位の範囲を広げます。 TR4とTR5を接続すると、モーターが回転するB点電位は次の図のようになります。

図:R4とR5がある場合のモーターの回転する範囲

2個のモーターが回転するB点電圧の範囲が狭いと、ちょこまカーが多少コースからずれた程度では直進するようになるので、スピードが上がります。しかし、直線の後に急カーブが来たときなどは曲がりきれなくなることもあります。 この範囲をどの程度にするかによって、カーブに強いちょこまカーや直線で速いちょこまカーといった個性が出せます。

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